
このページでは、「選挙人」制度の
- メリット
- デメリット
について紹介するよ。
選挙人制度とは?

選挙人制度ってなんだっけ?

大統領選挙において、
国民
↓(選ぶ)
選挙人
↓(選ぶ)
大統領
という風に、
「選挙人」が間接的に大統領を選ぶことを「選挙人制度」と呼ぶんだったね。

詳しくは前のページを見てお!
選挙人制度のデメリット(問題点)

選挙人制度のデメリットってなに?

デメリットは次のような事が挙げられるよ。
- 「1票の格差」が生まれてしまう
- 得票数の少ない候補者が勝ってしまうかも
- 選挙人の裏切り
順番に説明していくね。
「1票の格差」が生まれてしまう

「1票の格差」ってなに?

「1票の格差」は、州によって国民1人当りの「票の価値」が変わってしまうことを指すよ。

なんでそんなことが起こるの?

「議員一人当たり人口」が州によって違うからだよ。

どういうこと?
詳しい説明をおねがい。

各州の「選挙人」の数は、
上院の議席数+下院の議席数=選挙人の数
で決まるんだったね。

うん。

そのうち、上院の議席数分の「選挙人」は、人口が少ない州も多い州も、絶対に最低「2人」が選出されちゃうんだ。
例えば、次の表を見て。
州名 | 人口 | 上院の議員数 | 議員一人当たり人口 | 1票の格差 |
---|---|---|---|---|
ワイオミング州 | 約50万人 | 2人 | 25万人 | 1.00 |
カリフォルニア州 | 約1800万人 | 1800万人 | 72.00 |

この表では、「カリフォルニア州」の国民の票は、「ワイオミング州」の国民の票に比べて、72倍も価値が低いということが分かるよね。

上院の議席「2人」分の「1票の格差」は、人口差が広がれば広がるほど大きくなってしまうのか・・。

そういうこと。
あと、下院の議席数分でも「1票の格差」は生まれているよ。
例えば、次の表を見て。
州名 | 人口 | 下院の議員数 | 議員一人当たり人口 | 1票の格差 |
---|---|---|---|---|
ロードアイランド州 | 約106万人 | 2人 | 53万人 | 1.00 |
モンタナ州 | 約97万人 | 1人 | 97万人 | 1.83 |

この表では、「モンタナ州」の国民の票は、「ロードアイランド州」の国民の票に比べて、1.83倍も価値が低いということが分かるよね。

でも、1.83倍くらいの「1票の格差」は日本もあるよね・・?

そうだね。
2014年の衆議院選挙で、「1票の格差」が最大2.13倍になってしまったために、2017年に「小選挙区の区割りを見直そう!格差を最大1.999倍までにしよう!」ということになってるよ。
参考:区割り法案閣議決定 衆院「0増6減」、今国会成立へ(2017/5/16)
得票数の少ない候補者が勝ってしまうかも

これはよくニュースでも話題になったりしてたね。

うん。
例えば、2016年の大統領選挙では、「クリントン候補」は「トランプ候補」よりも200万票近く多くリードしていたのにもかかわらず、「トランプ候補」が勝ってしまったよね。※1

なんでそんなことが起きるの?

多くの州では、「勝者総取り方式」というルールになっているからだよ。

「勝者総取り方式」ってなに?

「一般投票で過半数の獲得した候補者は、すべての選挙人の票を獲得できる」というルールのことだよ。
例えば、次の表を見て。
州名 | 候補A | 候補B | ||
---|---|---|---|---|
獲得した票数 | 獲得した選挙人数 | 獲得した票数 | 獲得した選挙人数 | |
ワイオミング州 | 2万 | 0人 | 50万 | 3人 |
カリフォルニア州 | 140万 | 36人 | 120万 | 0人 |
合計 | 142万 | 36人 | 170万 | 3人 |

この表では
・獲得した票数は、B候補の方が多い(170万>142万)
・獲得した選挙人数は、A候補の方が多い(36人>3人)
=選挙に勝つのはA候補)
ということが分かるね。
こういうことが各州で起こって積み重なると、「200万票もリードしてるのに選挙には負ける」ということが起こってしまうんだ。

なるほど。
じゃあ逆に「勝者総取り方式」じゃない州ってどこ?

「メイン州」と「ネブラスカ州」だよ。

その2つの州は、どういう方式なの?

上院の議席分(2名分)を州全体での最多得票の候補に与え、残りの下院の議席分を、下院選挙区ごとに最多得票の候補に1名ずつ与えることになっているよ。
つまり、
- メイン州(4名分):
- 上院の議席分:2人
- 下院の議席分:2人
- ネブラスカ州(5名分):
- 上院の議席分:2人
- 下院の議席分:3人
という感じになるよ。
選挙人の裏切り

選挙人の裏切りってなに?

多くの州では
「選挙人は、一般投票で過半数の票を獲得した候補者に投票しなさい!」
ってルールで決まってるんだけど、このルールを破って「自分の好きな候補者に投票してやろう!」ということもできてしまうんだ。

ルールを破って投票した票は、無効にならないの?

一部の州では無効になるけど、多くの州では無効にならないよ。
(無効になる州では、選挙人は別の人と交代させられるよ)

ルールを破ったら罰金とかないの?

多くの州では罰金があるよ。
けど、そこまで多い罰金でもないから、「罰金してでも自分の好きな候補者に投票してやろう!」という選挙人が過去に何人かいたよ。

過去に何人の選挙人が裏切ったの?

1948年から2004年までの間に、裏切った選挙人は9人だよ。

選挙人の裏切りによって、選挙結果が変わってしまうことがあったの?

過去には起こってないよ。
選挙人制度のメリット

逆に、選挙人制度のメリットってなに?

メリットは次のような事が挙げられるよ。
- アメリカ全体で支持を得なければならない
- 2党制を強化できる
- 州の意思を尊重できる
順番に説明していくね。
アメリカ全体で支持を得なければならない

「アメリカ全体で支持を得なければならない」ってどういうこと?

多くの州は「勝者総取り」というルールを採用しているから、候補者は選挙人が少ない州でも選挙活動しないと勝てないんだ。
だから、候補者はどんなに小さい州でも選挙運動をする。
これがメリットだよ。

小さい州に住んでいる人からすると、「私たちのような小さい州のことも考えてくれていて嬉しい!」っていうメリットになるってことか。
2党制を強化できる

「2党制を強化できる」って「民主党」と「共和党」を強化できるってこと?

そうだよ。
実質、大統領選挙は「共和党」と「民主党」の一騎打ちだからね。

「民主党」と「共和党」以外の「一般の候補者」は勝てないの?

基本的に勝てないよ。
そもそも一般の候補者は、一定の署名を集めないと「一般投票」の対象になれないからね。

「一般投票」の対象になれないってどういうこと?

例えば、A州という州では「一般投票」で
- B候補を支持する「選挙人」
- C候補を支持する「選挙人」
- D候補を支持する「選挙人」
という感じで「選挙人」を選ぶとする。
この場合、A州が候補として認めていないE候補を支持する「選挙人」は、選ぶことすらできないということだよ。

一般人の場合、絶対に「選挙人」を獲得できない「州」がある可能性が高いのか・・。
勝てる確率がかなり下がるんだね・・。

じゃあ「一定の署名」って具体的にどれくらいなの?

例えば
- 「カルフォルニア州」では・・
- 「一般投票」の対象になるために、署名が13万人が必要だったりするよ。※2
- 「テネシー州」では・・
- 「一般投票」の対象になるために、275人分の署名だけで良かったりするよ。
という感じだよ。

州によって違うんだね。
州の意思を尊重できる

「選挙人」=「州の代表」だから
「州の意思を尊重できるよね」ってこと?

うん。
まとめ

選挙人制度って悪い存在なの?

どちらでもないよ。
そもそもアメリカは、
・「国民ひとりひとりの意見を尊重すべきだ!」という民主主義でもあり、
・「州ひとつひとつの意見を尊重すべきだ!」という連邦主義でもあるんだ。
つまり「選挙人」という制度は
2つの主義を同時に実現するために作られた制度なんだ。

じゃあ一概に「悪いものだ!」と言えないんだね。

選挙人制度は、一見すると非合理な制度のように見えるかもしれないけど、
アメリカという巨大な国を運営するには、「民主主義」と「連邦主義」の二つの柱が必要なのかもしれないね。
おわり
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